境内の木々の葉を揺らす風が冬の訪れを告げております。

さて、本日の住職のお話。高齢者の方々の車の運転について

思うところがあり、皆様とご一緒に考えてまいりたいと思います。

九年ほどが経ちますか、高校の同級生であったK君が

交通事故により命を落としました。

当時、彼は大学の同窓会の幹事を引き受け、その打ち合わせの

帰りで、深夜のタクシーにて帰路途中でありました。

右前方から猛スピードの乗用車に突っ込まれて、タクシー運転手は

即死。K君は一週間後、一度も目を覚ますことなく逝きました。

定年後には好きなゴルフ三昧と、長きにわたり支えてくれた

妻を労い、温泉巡りをしたい・・・生前に、そのようなことを語っておりました。

この事故の加害者は、26才の男性で、飲酒の直後に車を運転。

飲酒に加え居眠り運転でタクシーに突っ込んだのでした。

この不届き者による事故に遭わなければ、今頃は夢叶い、

ゴルフに温泉にと、第二の人生を満喫しておられた事でしょう。

2〜3日前のこと、路上で見かけたことを少しお話し致します。

個人タクシーが側道に駐車してあり、車中から運転手が降りてきました。

驚きました!腰は曲がり、足さばきはヨタヨタ、ヨボヨボ。

70代後半から80代前半位に見えました。

実は、K君が乗車していたタクシーの運転手も高齢者でした。

当時の新聞には確か76才とありました。

高齢社会の現在、当然ながら高齢者ドライバーが増えております。

特に田舎では、車無くして生活は不便極まりなく、若い家族も

おらず、日々の買い物ひとつとってみても、徒歩圏内に店もなく

車を使わずには生活が立ち行きません。

個人差は否めませんが、70も半ばになりますと老化により

動体視力はもとより、あらゆる機能が著しく低下致します。

交通機関の少ない田舎は別として、せめて街中で暮らす私共は、

70代前半をめどに、免許証を返さねばと考えております。

それぞれの状況は様々ですから、一概には申せませんが、

交通事故で落とす命がひとつでもなくなりますよう、高齢になれば

運転をなるべく控えるのが良いかと思います。

亡くなったK君乗車のタクシー運転手がもう少し若ければ、

突っ込んできた車に瞬時に反応し少しでも左側に避けることが

出来ていれば・・K君とタクシー運転手の尊い命、落とさずに

すんでいたかもしれません。そのように考えてしまうのです。

あらためて言うまでもなく、悪いのは26才の男性です。

76才の運転手は何も悪くない、お気の毒な被害者です。

お若い方、ご高齢の方、免許取得の方、免許の無い方。

皆様で、高齢者で車の運転、有りなのか無しなのか、

ご一緒に考えて頂ければと思います。

加えて申すなら、せめて、タクシー運転手は、70代前半位

までにと願います。人の命を預かる職業なのですから。

時は師走。皆様におかれましてもご多用かと存じますが、

住職のお話におつきあい頂き感謝申し上げます。

どうぞご無理なさらず、ご無事に年末へとお過ごしなさいますよう

心より願って、ペンを置かせて頂きます。

                         合掌

2017年(平成二十九年)12月 佳き日